「ギルガメシュ王ものがたり」は世界最古(5000年前)の物語と言われる「ギルガメシュ叙事詩」の絵本バージョンです。
ギルガメシュ叙事詩には、現存する様々な神話の原型が見受けられます。
旧約聖書のノアの箱舟、同じく旧約聖書におけるダビデとヨナタンの友情物語、ギリシャ神話の「オデュッセイア」などなど。
ギルガメシュ叙事詩は人間の成長物語であると同時に、世の中の普遍的な事象である「愛」や「友情」についても伝えています。
5000年間という時の洗礼を受けてきただけあって、そのストーリーは分かりやすいものでありながら深いものでもあります。
元々はこんな石板に、楔形文字で書かれていたものなんです。
ここから5000年後、世界中の3歳児が楽しんで読める絵本になりました。
表紙は厚紙を使った上製本です。
しっかりとしているので、簡単に破けません。
イラストはとっても迫力があります。
古代メソポタミアの暮らしが匂い立つようなタッチです。
いかにも子供受けを狙ったポップなものなんかじゃありません。
だけど、細部にこだわり過ぎて子供がついていけないようなものでもありません。
作者のルドミラ・ゼーマンは映像作家でもあるので、映画のような見事なコマ割りです。
この絵本を描くにあたって、ルーブル美術館や大英博物館の展示物を参考にしたそうです。
ストーリーはとっても分かりやすいです。
残酷な王だったギルガメシュが、エンキドゥと出会い、たたかいを通じて親友となり、ともにウルクの国をより良くできるように、助け合って行こうとするところでお話は終わります。
正直、これを買った時は早すぎた!と後悔したのですが、意外に何日か前の夜、子供の1人(3歳半)が寝る前の絵本の読み聞かせに、自らこの絵本を選んだのです。
文章が長いので途中で飽きて次のページをめくられたりもしましたが、最後まで読むことができました。
うちの双子の好きな「たたかい」が描かれているのもよかったのかな?
善と悪が戦うことだけが、たたかいではない。
たたかいを通じて生まれるものは、「勝ち」と「負け」だけではなくて、優しさや友情が生まれることもある。
「人間の成長」とはなんなのか?
そのあたりがちょっとでも伝わるといいなと思います。
ライフネット生命の創業者である出口治明さんの著書「教養は児童書で学べ」には下記のような説明があります。
「ギルガメシュ叙事詩」は、人生におけるあらゆることが詰まった物語です。
強い男性でもときには女性に弱くなるとか(逆もまた真ですが)、嫉妬は怖いとか、あるいは好敵手の存在が自分自身を成長させること、自然と文明の対立、動物と人間の関係、友情の大切さ、何かを得るためには必ず試練を経なくてはならないこと、人生のすべてはトレードオフであること、自分ののやりたいことを最後までやりきるには強い意思が必要なこと、そして人間は成長していく動物だということもわかります。
この本は大人でも楽しめる児童書を、様々な歴史を紐解きながら解説しているとっても面白い本です。
この本のおかげで児童書に対する見方が変わりました。
子供に本を読んでもらいたい、好奇心を持った人間になってもらいたいと思っている親にはおすすめです。
「ギルガメシュ王ものがたり」は3歳か4歳くらいから読める絵本だと思います。
うちの子は現在3歳半です。
飽きのこない素晴らしいイラストと、5000年前からの人類普遍のテーマを題材としたストーリーですので、長く子供が楽しめると思います。
「ギルガメシュ王ものがたり」のリンクはこちらです。
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